1.《ネタバレ》 刑務所からはじまるこの映画、冒頭30分のウルトラバイオレンスには身を乗り出しました。派手さや爽快さではなく、ひたすら痛いバイオレンスの連続。フランスで北野武がやたら支持されていることにも、何となく納得がいきました。しかもその間にてきぱきと話をまとめていき、本編への筋道もきっちり作るという手際の良さ。うだうだと設定をまとめきれない映画も多い中、息をもつかせぬ暴力描写とともにたった30分で下準備をすべて終えてしまった本作の冒頭は、アクション映画の鑑のような出来だったと言えます。そして、本編の内容もかなり興味深いもので、主人公は娘をさらった殺人鬼カップルを追うこととなるのですが、彼もまた、警察やマフィアから追われる身。さらには殺人鬼カップルの罠によって連続殺人犯にまで仕立て上げられ、彼を仕留めるために警察は最高の捜査チームを送り込んできます。果たして彼は、娘を取り戻すことができるのか?どうです、面白そうな話でしょ。。。
しかししかし、本編に入ると映画のテンションはガクっと下がります。理由は簡単で、冒頭のバイオレンスが、本編ではただのアクションになってしまうのです。武装した3人のチンピラから不意を突かれても素手で返り討ちに遭わせていた人間凶器が、街に放たれた途端にただの逃亡者に成り下がります。ただ逃げるだけ、警察に追い込まれても反撃は必要最小限に留め、不可抗力以外の理由で他人を傷つけることは皆無という穏健ぶり。冒頭での期待は一気に崩れました。ビルからのダイブやカーアクションなど派手な見せ場も準備されてはいるものの、私が期待したのは冒頭で繰り広げられたリアルな暴力描写、人間凶器が一心不乱に暴れ回る姿であって、ぎこちないジェイソン・ボーンを見せられるくらいならハリウッド映画をチョイスしますよ。オードブルは高価な珍味だったのに、メインディッシュはファミレスのハンバーグプレートになったかのようなガッカリ感でした。さらにガッカリだったのが、主人公を演じるオヤジの走り方がめちゃくちゃカッコ悪いということ。アメトーークの「運動神経悪い芸人」に匹敵するレベルの走り方であり、冒頭でこのオヤジに心酔した私のハートは一気に冷めました。