2.《ネタバレ》 評価の分かれる作品と思います。必要以上に謎めいた雰囲気を詰め込み過ぎて、結果「不条理系」としか言いようのない作品になってしまっているようにも思えますし、逆に複雑に絡み合った超感覚的な世界観を映像化すると必然的にこうしかなり得ない、とも思えます。
いずれにしても、草原の中に不気味に佇む黒い岩の存在が一番のポイントであることは間違いないでしょう。触れることによって具体的に何がどうなるのか、触れた人間にどんな変化が訪れるのか、そこは今ひとつ明確には映像化されていないし説明も漠然としています。ロスとナタリー、トービンの言動・行動から推測は出来ますが。
ただ、個人的には脳裏に浮かぶのは「2001年」のモノリス。モノリスとは異なり、人類の知恵と創造の元になるというような壮大で絶対的な存在とは思えませんが、草むらという特殊な環境を支配する神的な存在なのでしょう。不気味な顔面草人間たちは、黒い岩の創造した草むらの中でのみ存在する人類、といったところでしょうか。
草むらの世界を司る黒い岩は、そこに迷い込んだ者の行動や思考を意のままにするとともに、命や時間さえ制御します。一体、どこから来ていつからそこにあるのか、刻まれた文字は誰の意志を示すものか、作品中に明確な答えはありません。
しかしながら、少なくともベッキーとカル、そしてトラビスにはそれぞれのあるべき姿を示してくれたように思えます。そういう意味では、多分に宗教的とも受け取れる作品とも言えるでしょう。特にトービンの在り方を見る限り。
原作は未読。登場人物の設定は違うようですね。映像化された本作に関する限りでは、自分なりに多様に考察できるタイプの作品は好物なので7点献上します。