2.《ネタバレ》 野球シーズンの開幕に合わせて起こる「意外な伏兵」「ファーストラック」をスポーツニュース界隈では「春の珍事」と称する事が多いが、この映画は珍事どころか、奇妙奇天烈な話だと思う。能力が友情努力勝利ではないチート(ズル)である事も、キャッチボールの基本すらできてない投球フォームを見せるレイ・ミランド(これは多分わざと下手に見せている演技とは思うけど)も、「(盗塁を)刺す/殺す」という言葉をギャングの隠語と勘違いされるギャグも、ベタすぎる話の展開も。2020年代の映画人からすれば馬鹿馬鹿しい、それは否定しない。ただ私は何もない時代に創意工夫で面白い映画を撮ろうとしていた手作り感溢れるこういった「ホラ噺」が大好きだ。そしてそれ以上にアメリカ映画界の野球、じゃないベースボールに対するリスペクトがこういった佳品にもちゃんとある事が嬉しいし、なによりこういった題材をつかわれても全く動じる事のないベースボールの「おおらかさ=器の大きさ」に感心してしまう。「私を野球に連れてって('49)」→「くたばれ!ヤンキース('58)」→「がんばれ、ベアーズ!('76)」→80年代の「ナチュラル」「フィールド・オブ・ドリームス」「メジャーリーグ」と続くアメリカン・ベースボール・ファンタジーの系譜の原点として、機会があれば。