1.《ネタバレ》 中朝国境の白頭山(2744m)が大噴火して半島に壊滅の危機が迫る映画である。日本でいえば「日本沈没」を思わせるので、最後は半島が救われた代わりに日本が沈没した、などという話だったら笑ったが、そういうタイプのおふざけはなかった。なおトンガで火山の爆発があった時(2022/1/15)にこんなのを見るのは不謹慎だろうが、見たのは爆発前(1/14夜)だったので許してもらいたい。
前に見た「韓半島」(2006)と同じく基本的には南北統一を志向しているが、近年の情勢変化を反映しているようなのは興味深い。もう北を対等な協力相手にはできなかったようで、この映画では南主導で米中のうち主にアメリカを悪役にし、核保有国の立場を保ったまま統一を果たす形を作っている。一方で日本が全く表に出ないのは、近年の日本政府が冷淡だったせいかも知れないが大変結構なことだった。日本人には見やすい映画になっているが、アメリカ人なら腹立たしいところもあるかも知れない。結局どこかにしわ寄せがいく。
なお「科学忍者隊ガッチャマン」が出てきた意味はわからないが、これは台湾のアニメ映画「幸福路のチー」(2017)でも印象的に使われていたので、東アジアの民に共通の視聴体験かも知れない。
派手な映像としては予告編にも出る都心崩壊のあと、中盤で漢江?の橋、終盤で大噴火の様子なども出るが、ほか基本的には南北の主人公コンビがやらかすコメディじみたドタバタアクションで楽しませる。咸興や平壌といった都市の映像もそれらしく見せていた。
主人公2人がTVドラマについて話す場面では「愛の不時着」が出なかったが、どうもこの映画自体が似た性質のものらしい。ラブストーリーでは当然ないとしても、おっさん同士が抱き合って気絶している場面があったりして、南北の心理的距離が縮まる過程も描かれている。両人とも国家への忠誠心は不足のようだったが、国はどうでも人間同士がわかりあうことが統一への近道だということらしい。
最後は首都の復興が進んでいるのも見えており(その金はどこから出たのか?)、非常に清々しいラストになっている。加えて日本が出ないのが極めて好印象だったので悪い点はつけられない(ガッチャマンだけ余計だったが)。
登場人物としては、主演俳優の名前の「イ」とその役名の「リ」は同じ「李」だろうが、発音に南北の違いが出ているのは意図したことなのか。
個人的にはミン中士(閔中士Sergeant Min、白鳥のジュン相当/演:옥자연 玉子妍)の頑張りを応援していたが、途中でいなくなったのは残念だがほっとした。また青瓦台の民政首席秘書(演:전혜진 全慧珍)も結構好きだ。この人を守った警護官も格好いい。こういう役になりたい。