1.《ネタバレ》 原典とディズニーアニメへのリスペクトを散りばめつつ、ギレルモ・デル・トロなりの解釈を加えた、
"ピノッキオの冒険"というよりは"ピノッキオの数奇な人生"に近い。
戦争と死が身近にあったムッソリーニ政権下のイタリアで、
ピノッキオは時代に翻弄されながら権力と運命に屈せず、自分の意思で試練に立ち向かう。
しかも彼は死んでも待機時間と称して、時間が経てば何度も生き返ることができる。
つまるところ、限りある生を持った人間とは違い、永遠の命を持つことの意味を彼は知ることになる。
我々が知っているピノッキオは最後は人間になるが、本作では木の人形の少年のままだ。
ハッピーエンドになっても、いつかは死という永遠の別れが訪れ、ピノッキオ一人が残される。
冒険を通じて、様々な通過儀礼を経験した彼は新たな旅に出て、その先の物語をどのように紡いだのだろうか。
寂しげで儚い終わり方であり、逆説的に言えば、
ピノッキオではない人間はたった一度の生を如何に生きるかを問われていると言える。
国家に言われるがまま、少年兵として散っていくのか?
ストップモーションによる表現力もさることながら、隅まで行き届く美術を堪能。
とは言え、友情を育んだ市長の息子の消息が不明のままで、
終盤の興行師との"再会"が偶然すぎたりと、脚本的にもう少し何とか出来たと思うが。
ユアン・マクレガーによる主題歌は必聴。
すごい歌唱力だ。