1.《ネタバレ》 タル・ベーラの長編2作目であり、唯一のカラー長編。
ゆったりした流れのカメラワークは皆無だが、長回しと踊りと酒場は初期から存在し、
セミドキュメントらしさはある。
一言で言えば、面白くない。
ただ、ソ連支配下の社会主義国だった当時のハンガリーの生きづらさは体感できた。
アーティスト気質でありながら、刹那的で楽観主義で社会不適合者に見える主人公なら尚更。
音楽で食べていけるほど甘い世界ではなく、誰もが生きていくことに必死で普通に働くだけでも余裕がない。
妻子持ちで問題から逃げ回る主人公は中途半端に一芸があったために職も長続きせず、
音楽と踊りに明け暮れ、ディスコでの妻との痴話喧嘩すらヘラヘラしてばかりで、そのツケが徴兵となって現れる。
主人公が退場したあと、主賓をもてなすハンガリー狂詩曲を弾く音楽家との対比が鮮烈だ。
大きな夢を持つ人はいるが、何かを犠牲にしなければいけない覚悟と決断があるか。
それを先延ばしして、10年後20年後には取り返しのつかないことになっている。
映像作家として成功したタル・ベーラによる世界を変える方法は「自分を変えること」。
主人公はそれができず、夢を打ち砕かれることになってしまった。