1.《ネタバレ》 南米パラグアイの映画である。紹介文によれば現地でも大ヒットしたそうで、絶賛するほどでもないが普通に楽しめる。首都アスンシオン(多分)の市場街の込み入った場所感も見どころになっている。
題名は冒険ファンタジーのような印象だが、実際はただの運搬用の木箱である。その箱をめぐって追ったり追われたりのスリリングな展開になるが、主人公やその姉のラブストーリーの始まりという要素もあって和ませる。主人公の幼馴染?はなかなかいいキャラクターだった(うるさいが)。また警察署にいたおネエさんの「恋はこうやって始まるのよ」は説得力があって笑わされた。
特徴点として、ばらばらに出て来た登場人物が実は家族関係や交友関係でつながっていたり、警官も毎回同じ男だったりして非常に狭い世界の印象があるが、これが現地の下町風情の表現だともいえる。相当ヤバい連中もいたが、いざとなれば近所の知り合いが助けてくれることもあったりして、善悪込みの庶民生活が描写されている。
ラストはもう少し素直に盛り上げてくれればと思わなくもなかったが、結構な死人が出た一方で生まれて来る者もあり、今後もこのようにして人々の暮らしが続いていくという意味だったかも知れない。結果的にはエンタメとして楽しめることのほか、庶民の哀歓を表現することにも重点が置かれた映画かと思った。
その他、当時のパラグアイ事情の紹介かと思う点について列記:
・2005年時点で携帯電話がすでに普及していて写真や動画が撮れるものもある。今なら個人の動画を報道機関に提供するのも珍しくはないが、この映画の時点でパラグアイでもその端緒となる事件などがあったのか。人が死ぬ動画をそのままTVで流すのはまずいだろうが。
・現地通貨グアラニーと米ドルのレートで頭が大混乱する映画だった。パラグアイでは2011年に1/1000のデノミを行う予定だったがなぜか中止になり、今もこういう状態のままらしい。商売敵の妻の所持金1万グアラニーは劇中レートで1.53米ドルでしかなく、現地はよほど物価が安いのかと思ったら、実際に世界的に物価の安い都市とのことだった。
・窃盗、強盗、営利誘拐(身内も共謀)といった犯罪が多発する。いきなりナイフで刺す物騒な奴もいたが、犯罪者にも家族を養う事情があるといったことも普通に見せている。
・個人で手押し車の運送業をしている人々は実際に多いのか。商売敵の集団が主人公を追う場面でもみな一台ずつ荷車を押していたのは、戦いに馳せ参じる際に必須の武具のようで面白かった。
・別に珍しくないかも知れないが外国系住民が普通に商業に従事している。いきなり東洋人が出て来て何かしゃべるが字幕が出ないのでどうでもいいことを言っているのかと思ったら、何を言っているかわからないこと自体を生かした場面もあってなるほどと思った。ちなみに店名は「東洋飲食」(동양음식)とのことで、韓流にこだわらず適当に中華なども出していたのだろうと想像しておく。
・別に珍しくないかも知れないがネコが4回くらい見えた。実際にネコが多いのか、または監督か誰かの趣味かも知れない。