17.タイトルに興味を惹かれ見たのだが、国籍人種の違うたくさんの人たちが登場したくさんの物語が進行する、所謂グランドホテルのホテルが汽船になった映画だ。思わず笑ってしまいそうなシーンあり、感動させられるシーンあり、考えさせられるシーンもある。それでいてしっかりひとつにまとまっていると思う。人間誰しも愚か者なのかなあ。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 7点(2014-12-15 21:27:46) |
16.《ネタバレ》 批評家からの評価も高く群像劇としての完成度は高いけど、なんか小ぢんまりと纏めましたという感じがする作品です。舞台が英米仏の豪華客船でなくて、いかにも二流感が溢れるドイツの客船としたところはうらぶれたムードが出ていて良かったです。 登場人物はみな善人かせこい悪人というわけですが、この連中は“fools”と呼んでしまうにはあまりにも普通の人間すぎる気がします。誰が「君たちは愚か者だ」と言っているのかというとそれは神様で、映画の冒頭とラストで観客に語りかける“神の子”マイケル・ダンが天上の代弁者ということなんでしょう。 この映画のいちばんの悪人は反ユダヤ主義に凝り固まったオーストリア人のホセ・ファラーになるんでしょうけど、彼の演技が魅力的なんで誰も憎む気にはなれないでしょう。シモーヌ・シニョレとオスカー・ウェルナーの悲恋がストーリー展開のメインではありますが、出番は少ないながらもヴィヴィアン・リーのエピソードにはすっかり喰われてしまったみたいです。リー・マーヴィンとのからみとその前後の狂おしいまでの演技、やっぱこの人は凄い女優だったんですよね。 【S&S】さん [DVD(字幕)] 6点(2013-12-15 20:08:51) |
15.《ネタバレ》 群像劇として、よくぞここまで細かくからめてあるなと思いました、時代が暗くなる時代に主義主張も、過去も違う人間全てを主人公として、非喜劇を行う。 全ての主張が、その人間の全てであり、正しい感覚という物は絶対出ない。例えば、自分の愛犬を助けた男が死んだということを聞いた夫婦が、人間<愛犬としか見ないのは、この夫婦の当たり前であり、ユダヤ人が百万人もいるから大丈夫だと言ったユダヤ人は、この人物の当然であるが、周りも、先も見えていない。 狂言回しのグロッケンが、言うことが皮肉に良い事を言うからおもしろい。 淡々としたドラマだが、楽しめた佳作だった。 【min】さん [DVD(字幕)] 7点(2013-07-17 23:30:48) |
14.通常、カメラワークなんかは気にしないのですが、本作品はやはり注目してしまいました。なるほど、これが名人芸ですか。1933年の設定なので、その後の運命を知らない登場人物達の言動ではあるのだが、その後の世界情勢を知っている観客がどんな印象を持つかまで計算しているように感じました。この愚か者達は、私達自身の姿でもあるのでしょうね。印象に残ったのは、外角のカーブが打てなかった野球選手とやはり伯爵夫人と医官の悲恋エピソードですね。ユダヤ人の立場とジプシーの強かさには歴史の重みを感じた。 【パセリセージ】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2012-05-18 23:49:22) (良:3票) |
13.誰もがみんな自分を見失ってしまっていて、ドツボにはまっている「愚か者たちの船」。個々のシーンでの俳優さんたちの演技は素晴らしいけど、映画全体としてはなぜか抑揚というか盛り上がりにかける一編。これが遺作となったヴィヴィアンの「欲望という名の電車」をいやでも想起させる鏡の前の、鬼気迫る入神入魂演技を観るだけでも価値有り。結局この稀有なる美貌の女優さんは、後半の女優人生を「欲望~」のブランチをなぞるような形で締めくくっちゃったんだなあって、なんとも言えないほろ苦い感慨を持ちました。実は僕も今自分を見失ってます。正直出てくる登場人物誰もが自分の一部であるような気がしました。映画の中ごろあたり、ここで氷山に衝突したら深みのある「タイタニック」が出来たのになあって思ったのは俺だけですか? 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-04-28 18:43:08) |
12.あなたと何の関係があるというのでしょう・・・nothing! 突き放すね~、ブラボーじゃっ(でもえらい痛いんで-1点)。わしのお気に入りは外角カーブのおっちゃん(^^)。おっちゃんがビビアン・リーとからむでしょ(笑)。肩で風斬る演出だね~、粋だね。 【ジマイマ】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-04-12 22:37:39) (良:1票) |
11.《ネタバレ》 ↓クリムゾン・キング様御指摘の点、まさに同感であります。冒頭で「あなたもこの船に乗ってるかも?」などと言われると、一瞬、蛇足に感じ、「どうせ、この船は社会の縮図です、だってんだろ、そんなの見る前から想像つくんだよ!」な~んてことを思っちゃう訳ですが、ラストのセリフを聞いて、ああこりゃ一本取られたナ、と。普通はこの逆ですよね、最初は我々と映画との関係に距離を置き、最後に「うむ我々と無関係ではないわな」と考えさせるお決まりの公式。これを逆にする見事な効果に、一本とられました。しかも、セリフの多い本作において、このラスト前にはしばらく音楽だけが流れるんですよね。憎いぜ。さてこの映画、いわゆる群像劇というやつでしょうが、まるで、緻密に書き込まれた管弦楽曲を演奏するオーケストラを思わせます。オーケストラの各演奏家たちが、ある時は表情豊かにメロディを演奏し、またある時は内声部において楽曲に深みを与えて、万華鏡のごとく色彩を変えながら楽曲は進行していく。そこにおいては、各声部を演奏する演奏家たちの間に調和と矛盾が常に混在しており、そのバランスを指揮者がとることで、推進力が生み出されていく・・・実際には、劇中で奏される音楽以外には、音楽は多用されていない作品ですが、それでも、何か音楽的な印象を受ける映画でありました。ところで、↓へちょちょ様御指摘の、スタジオ撮影の件、これは正直、私もいささか不満に感じております。海の映るシーンでは船の左舷が多く、大抵、背景の海が右から左へと流れていく映像になってます。これもまあ、もしかしたら、時間の流れを表現しようとした意識的な演出なのやも知れませんが、この単調さが、船の空間的拡がり(あるいは空間的狭さ)の感覚を損なってしまっているように思えます。しかも、背景の海と空の映像、一部使い回してるもんだから、違う日なのに同じ形の雲が出てたりするんだもんなあ。気をつけて欲しいゾ(笑)。ま、しかし、そのくらい、敢えて船上の人間模様にこだわった作品と言う事で(船外での本来の人生についても色々語られはするが、抑え気味でやや抽象的)、貴重な映画ではないかと。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-04-09 23:22:33) (良:2票) |
10.《ネタバレ》 このたび、アカデミー賞受賞作品のDVDがが期間限定で発売になっていて、その中にこの作品も入っていたので、ようやく見ることが出来ました。「ここは愚か者の船…もしかしたら、あたたもここに乗ってるかもしれないですぞ」という冒頭のシーンより始まり、「この話があなた方と一体何の関係があるって?何もないね」というエンディング…まったく突き放してくれますね。しかし、本当に関係なんだろうか?と思えば、実際、誰もが関係してるんですよね。甲板で騒ぎを起こしている“底の者たち”も居れば、ダンス・パーティに興じている“上の者たち”もいる。偏見を持つものも居れば、閉ざされている未来を“明るい未来”と思い込む者…そしてこの冒頭の“つかみ”と最後の「ウソだよ~ん」と騙されたような“まとめ”全くにくい演出です。それから、皆さんも触れていますが、本作は本当に疲れる、いや、素晴らしいカメラワークをしています。主人公たちが次のシーンでは背景の如く溶け込み、また今までエキストラだと思っていた人が実は主人公の一人だったりと、それに、遠くの方もピントがあってますから良く見えること見えること。登場人物の会話そっちのけで“後ろの人”を観察してたもんです。改めて、映画作りの美しさを知った気がしました。 |
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9.所詮人間という生き物は、"偏見"と"世間体"というものから 逃れられない、愚かな生き物である。 自分より下と見る人間を見下し、自分の"地位"をあげることで 優越感を保っている。それが上位人間にとっての生きがいであり、 下位に区別される人間はこの上ない屈辱を味合わされる…。 人間の醜い部分が描かれているのが『愚か者の船』。 心の臓が痛くなる映画でした。 【キリキリマイ】さん 6点(2004-12-08 00:14:57) |
8.これは不朽の名作等ではなく、正に朽ちた名作。粋なタイトル・バックと導入部からは想像もつかない程、物語の賞味期限切れが甚だしい(個人的には製作当時でも既に期限切れだったと思う)。その中では流石にリーディング・ロールだけあって、ヴィヴィアン・リーのエピソードだけが普遍性を携えていた。「欲望という名の電車」にだいぶ被りますけど、「犯されること」よりも「犯されないこと」に深く傷つく年増女は、相変わらず痛い役柄。「ユダヤ人なんて初めて見た」と言うリー・マービンに向かって、「黒人をリンチするのに忙しかったんでしょ」という台詞も決まってました。それにしても、ここでも非常に気になったのが、無理矢理なドイツ語訛りの英語。ヘンテコ発音にこだわる伝統は、一体いつ生まれたんでしょうか? 4点献上。 【sayzin】さん 4点(2004-11-26 00:16:34) (良:1票) |
7.元野球選手とビビアン・リーのラスト近くの絡みは観てて切なかった。いきなりキスされ初めは抵抗したビビアン・リーが次第に抵抗をやめて、しかし元野球選手は人違いと気付いて「なんだ、あんたか」・・・残酷過ぎる。 【ゆきむら】さん 7点(2004-11-19 22:05:32) |
6.所謂グランドホテル形式を思わせ様々な人間模様を見せてくれる、がその群像が文字通り群れてしまっているという印象で個人個人の魅力に欠けた。あの小男が乗船から下船まで人間観察を満喫するその姿が楽しそうであり切なくもあった。グランドホテルとは比べたくない一品。 【スルフィスタ】さん 6点(2004-04-29 03:51:54) |
5.ホテルや船等の箱物舞台の人情系映画は、そこに集う客をある程度均等に描く必要性があるせいか、限定された空間の中で複数の人間関係のストーリーがパラレルに展開されるため、どうも話についていけないというか散漫な印象が残ってしまいます。私に個別のストーリーを追いかける能力・気力がないからだと思うのですが。全体的なまとまりはあるとは思いますが、作品の軸が感じられずどうしても平坦な印象になってしまいます。 なんか私独りだけ点数が低くてコメントするのが心苦しいですが。 |
4.堪能しました。このグランドホテル形式の群像劇作品をたとえていうなら、豪華な具がてんこ盛りの美しいちらし寿司のようです。どこをとってもおいしい。たくさんの人々やエピソードもそれぞれが立ち上がり、混乱することなく人間模様が浮かび上がります。どこに惹きつけられるかは様々でしょうが、私はシニョレの伯爵夫人と船医の恋の進展に一番胸がキュンとなりました。ビビアンが階段下で唐突に踊りだすのもびっくり。晩年の幸せではなかった彼女の人生を思うと、この笑わない冷めたような役柄が遺作というのもしみじみと感慨深いものがあります。出演者たちが次々と下船してくる演出もエンドロールの挨拶のようで面白い。船中でユダヤ人がその後の迫害を知るべくもなく、ドイツに住むユダヤ人は何百万人もいるんだぞ、といって杞憂を笑い飛ばしたのに家族の再会を喜ぶ彼の前を横切るナチス党員を登場させるうまさ。愚かな人も多い中で犬のために死んだ彫刻家のエピソードは際立って美しく見える。ほんとに見所が盛りだくさんの作品です。 【キリコ】さん 8点(2004-02-21 12:53:27) (良:5票) |
3.数日前にウチの二歳のやんちゃ姫にビデオデッキを壊された。修理に出すとへちょちょ様のプロフィールにてご推薦の今作放映に間に合わない。おそらくその日は飲みに行く。(飲みに行った。)いっそのことBS対応のものに買い換えを進言すると半分出せと。絶句!..でも買って良かった。なんといっても巻き戻しの速いのなんの..ってビデオデッキのレビューしてどうすんの!いやホント良かった。私も食事のシーンで画面の奥のビビアン・リーを発見してから後ろの方ばかり見てました(笑)。登場人物の多い作品では全てのキャラクターを描ききるのに結構苦労が見えたりするのだが、今作はいとも簡単に描ききっているように感じる。へちょちょ様のおっしゃられるように主役級の俳優を特別扱いしなかったからなのでしょう。これだけの登場人物を追っかけるのに疲れないのがなによりいい。うわべではわからない愚か者っぷりが見事にさらっと描き出されている。今作を推薦してくださったへちょちょ様はもちろんのこと、やんちゃ姫にも是非言いたい。ありがとう! 【R&A】さん 8点(2004-02-16 11:05:48) (良:2票)(笑:1票) |
2.《ネタバレ》 今回の衛星第二のオンエアで、学生時代に名画座リバイバルで鑑賞して以来の再見となった本作だが矢張り見応えのある秀作だった。本作最大の魅力がオスカー(撮影賞)をゲットしたアーネスト・ラズロの超絶カメラワークにあることはSTING大好き様の仰られる通りなので敢えて繰り返すまい。ただ蛇足を承知で付け加えるならば、群像劇の各エピソードが多彩なキャラクターの人物造形に深みを与えることに成功している点であろう。無論キャサリン・アン・ポーターの原作あっての成功であるが、並みの監督ではビビアン・リーやシモーヌ・シニョレ、オスカー・ウェルナーら主演級の数人を描き出すのに汲々としていたハズ。クレイマーの非情なまでに醒めた演出はハインツ・リューマン演じるユダヤ人ローウェンタールやマイケル・ダン扮する狂言回しの矮人グロッケンをも活き活きと描き出す。三等客室のキューバ人暴動シーンの迫力は出色である。しかもどの人物も簡単にこちらの予想を許さない複雑な性格設定であり、月並みな群像劇とは明らかに一線を画している。つまりクレイマーは「こいつらは脇役だから」と俳優ネームバリューで手抜きをしたり差別化したりはしていないというコトだ。ぐるぐる氏ご指摘の”犬を助ける為に死ぬ彫刻家”が最も印象に残る、というコメントはその格好の証明となっていると思う。事ほど左様に所謂「グランドホテル」形式というヤツは下手にやると目も当てられぬ出来となるので要注意なのだ。個人的には矢張りビビアン・リー最後の映画出演が痛ましくも深く印象に残る。殊に酔って階段を降りつつシャンパングラスを置き、突如踊り出す場面の滑稽さは鬼気迫るものがあった。惜しむらくは明らかなスタジオワークが「海上」という隔絶された舞台装置をフルに生かしきれていない恨みが残る。当時ならばロケーションを敢行するのは不可能ではなかったハズなので遺憾ながら1点マイナス。 【へちょちょ】さん 9点(2004-02-16 02:56:53) (良:3票) |
1.(林家こん平風に)アッシにゃあ、むつかしいコト(↓)はよく分かりませんが、面白かったすよ。群像劇って登場人物を把握するのが大変でちょっと苦手なんですけど、ストーリーが進行するに従って、各人物の背景が少しずつ明らかになる過程がとてもスリリングでやんした。しかも1933年という時代設定の中、冒頭に登場する小人症の男や、やや陰のある船医、反ユダヤ主義の好色なジャーナリスト(だっけ?)などなど、ここに書ききれない程の登場人物達が織り成す豊かな人間模様は、まるで深みのある極上ワインを味わうようでごんす(飲んだことないけど)。個人的には、海に落ちた犬を救おうとして命を落とした貧しい彫刻家のエピソードが好きっす。 【ぐるぐる】さん 8点(2004-02-15 22:10:09) (良:2票) |