16.《ネタバレ》 ロベール・ブレッソン初期の頃の傑作サスペンス。
素人採用により、妙に迫真とリアリティを持った作品だ。
尺も76分と、ブレッソンらしい短さで、無駄のない作り。
間延びした映画が多い中、ブレッソン作品のこうした短さへのこだわりは特筆に値する。
主人公のミシェルは大学生とのことだが、全然そうは見えない。
単なるオッサンだ。
スリに味をおぼえ、スリという犯罪を正当化し、ドップリはまっていく主人公を描いた作品。
スリのあらゆる手口が次々に紹介され、観ているこちらは口をあんぐり、目を釘付けにさせられる。
ただ、そのうちの何個かの“スリ実演シーン”は、「それは無理っしょ?」という感じのものもあり、少し残念。
「前の女性がハンドバッグを脇に挟むと同時に、後ろから新聞紙を挟みこんで、取り替える」
これはさすがに無理があるっしょ?
そういう意味でも、目が釘付けになること間違いナシ。
ヒロインの女性がかなり魅力的。
こちらも素人さんということで、他の作品では観れないのが悔やまれる。
残念だ。
フランス人監督で、一部に熱狂的なファンを持つ、孤高の映像作家ロベール・ブレッソン。
その人気の理由を理解できたような気がした。
ブレッソンならではの独自の映像世界を持っているのが魅力。
イングマール・ベルイマンもそうだけど、内容うんぬんともかく、その創り出す映像世界は超個性的!
こういう監督の作品は何本か観てしまうと、他の作品も全部観てみたいという欲求にかられてくる。
ただ、ほとんどDVD化されていないし、頼みの綱のツタヤ新宿店にもあまり在庫が無いのが残念だ。
特に『少女ムシェット』を観たいのだが・・・