6.《ネタバレ》 面白いのは主人公が誰からも愛されてしまうこと、何となく助けてしまいたくなる。彼自身が必死に新しい環境に適合しようと努力しなくても、周囲が歓迎してくれちゃう。ドイツからロシアに投降しようとして、逆に英雄になるあたり笑える。投降ってのは本来、味方から敵への質的変化を伴った移動のはずなのに、彼にとっては等価のAからBへの衣装替えにしか過ぎなかったわけだ。「演じる」以前に、国家なんてものも仮に所属しているだけって感覚だったんだろう、ユダヤ人にとっては。これで民族からも自由になれればいいのだけど、ああそうか、割礼ってのは民族を拘束する儀式なんだな。20世紀の二大独裁者の間でピンポンされた青年。どうしようもないピンチになると、悪の根源であったはずの戦争の破壊によって(散乱する書類)救われる皮肉。医学的にユダヤ人とドイツ人の違いを教える授業が怖い、と思いつつ、本当に困ったことなんだが、ナチのマークの存在する画面って、なにか身が引き締まる清潔感を感じてしまうんだな。ユダヤという「病気」を外部に捏造した社会の、幻の清潔感なのは重々分かっていても。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-07-19 10:07:56) |
5.《ネタバレ》 これは面白かった。主人公に危機が迫ると流れるBGMが可笑しかった。主人公をとにかく追いつめる、この監督、面白がっているなと思っていたら、実話!?ですか?一番気の毒だったのが、好きな彼女を抱けなかったこと。紐で縛る、っていうのは、想像するだけで痛々しい。この主人公の俳優、いい味出してる。もっと有名になってもいいのでは?と思った。 【トント】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2010-03-02 15:46:36) |
4.《ネタバレ》 確かにこんなに奇妙な話は実話じゃないと映画にならないですよね、創作すれば、「このご都合主義の脚本はなんだ!」と、間違いなくと非難ごうごうです。ただ実話で本人が存命中の映画化だけに難しいところもあったのではと思います。「ユダヤ人はマダカスカル島に送られたと思っていた」という主人公の言い分には、「本当にそうだったの?、虐殺されていることに気づいていたんじゃないの?」という疑問が湧きます。ドイツ人になり済ますという苦労は理解できますが、エリート少年として扱われ、結構楽しい思いもできたのではないでしょうか。劇中終戦間際に収容所を生き延びた兄と再会した時、「僕が女を追いかけてたとき、兄はゲットーから収容所に送られんたんだ」と独白するシーンがそれを暗示しています。この時代にユダヤ人が生き延びるということは大変なことだったのだ、ということはもちろん否定しませんが。ラストにイスラエルで存命の老いた主人公の映像が出たとき、「あっ、スピルバーグは絶対この映画観てるな、“シンドラーのリスト”のラストの参考にしたな」と思いました。 【S&S】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2009-09-24 00:01:34) |
3.あまり何も知らずに観たのですが、最後実話と知ってビックリ。事実は小説よりも奇なり、でした。割礼は言葉しか知らなかったのですが、そういうことにより、戦時中窮地にも陥りリスクを追うということがよく分かりました。またドイツとソ連と、ナチスとコミュニスト両方の教育の描写も興味深かかったです。途中、ヒトラーとスターリンがダンスするシーンにあるように、何か戦争やイデオロギーなるものが、一種馬鹿馬鹿しくも感じました。しかしヒトラー・ユーゲントの学校生活は、主人公にとって一瞬たりとも気が抜けず、観ていて一番厳しかったですね。話の展開もテンポよくてダルくならないし、シリアスだけどホッとする場面もある。地味に秀作でした。 【泳ぐたい焼き】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2009-03-08 19:40:31) |
2.何これ?戦争ギャクの連続?ではなくて実話なんだそうです。宗教かぶれの少年が「天にましますわれ等が父よ、われ等にキャンディーを与えたまえ。」と言っても何も起きないのに社会主義かぶれの女性が「偉大なるスターリンよ、われ等にキャンディーを与えたまえ。」と言ったら本当にキャンディーが天井から降ってきたり(もちろん陳腐なやらせです)、ついでに塵芥も降ってきて「ドイツが攻めてきた!」ということになったり、非戦闘員や牛や馬を戦闘機が攻撃したり・・・。それから例の割礼・・・これはイスラム教徒とユダヤ人の男児が結婚後の奥さんの健康のために生まれた直後に受けることが慣例になっていて医学的根拠もちゃんとあるのですが・・・割礼がこれほど赤裸々といおうか下世話に描かれているのも初めて見ました。「はい、ズボンとパンツを下ろして・・・。」なんていうことを人を人とも思わないナチスドイツの軍人は被占領国の男性に対して平気で言うのですね。戦争中の日本軍人は韓国人や中国人に(当たり前だけど)こんなひどいこと命令してはいないでしょう。果ては、ユダヤの血を引いているという説もあるヒトラーが主人公の夢の中でスボンははいているものの、急所を手で覆ったぶざまな恰好で登場したりして・・・。元来、戦争というものは悲惨なだけではなく下世話でもあるようです。戦争のひとコマひとコマは涙なしには語れない悲劇でも全体を眺めた時は「何の利益があってこんなドンパチやって、ぶっ壊したりぶっ殺したりしてるの?」という疑問しか出てこない、戦争それ自体がすでに一大ナンセンスで、この作品はまさにその一大ナンセンスのネガ・フィルムみたいな作品です。コメディー、ミュージカル、アニメ、純娯楽作品に私がつけることにしている最高点で、チャップリンの「独裁者」につけたのと同じ8点を献上。作品全体は全然下世話ではなくリアルすぎるといった感じで、主人公の男の子が本当に魅力的なのでそれだけでも一見の価値はあります。 【かわまり】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-06-24 00:03:24) |
1.《ネタバレ》 「こんなことある?」「そこまでするか?」と嘘のような本当の話。私も掘り出し物でした。こんな特異な物語があの時代にあったなんて驚きました。すばらしい映画だと思います。脚本も展開も演出も良いと思います。隠れた名作じゃないでしょうか?もっと評価されていいと思います。昔、何気なく選んで映画館で観たのですが、本当にラッキーでした。デルピーはこのころから輝いていましたね。美しいです。 【shirasu】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-05-10 02:52:19) |