10.《ネタバレ》 テレビ映画という制約もあるかもしれないが、今作はハネケらしさを封印し、
フランツ・カフカの世界観を忠実に映像化しようとする姿勢が感じられる。
非常にクセが強く、読みやすいとは言い難いカフカの小説は、
当然、映画も多くの人に受け入れられる代物ではない。
ただ、活字で読むよりはマシだろう。
簡単に言えば測量士Kが仕事で城を訪ねるが一行に入れる気配もなく、右往左往に冬の城下町を彷徨うだけ。
周りの対応にイライラするが、主人公の優柔不断さにもイライラする。
ネガティヴな性格のカフカの人生を反映させているようである。
そして滑稽。
未完の小説を映画では如何してに完結させるか?
普通ならオリジナルの結末を付け加えるがハネケはそれを拒む。
いきなり黒画面を背景に「カフカの草稿はここで途切れている」とテロップを叩きつけて、
観客をそのまま放り出すのだ。
それを含めての不条理劇として受け止めるか、何を描きたいのか分からない映画として唾棄するか。
自分からすれば、その世界観に酔えるほどの感性はなかったということだ。