4.《ネタバレ》 これは上質なコメディ。「半身が女性になってしまう」という実にバカバカしい設定を、スティーブ・マーチンが
見事に演じ切っている!この素晴らしい身体芸があったればこそ、映画のウソを心の底から楽しむことが出来た。
「ああ、こういうのがフィクションの楽しさだよな~」と、久々に満たされた思い。
どうやら原作があるようなので、そっちの面白さかなぁとも思うが、とにかく丁寧で良く作られているオハナシだと思う。
主人公ロジャー(S・マーティン)はジャズ・ギタリストと弁護士の2足の草鞋を履く働き盛りの男。出だしのクレジットタイトルの間にその辺の状況をチャチャっと説明してしまう手際の良さも感心するし、このキャラ設定が「富豪の女の魂が乗り移る」という彼の運命を示唆しているのも上手い。弁護士業に専念すると決めた彼は、今度は「男と女」という2足の草鞋(?)を履くことになってしまうのだ。
インド人の魔術師となかなか連絡がつかない状況とか、女の魂とのやりとりを恋人に聞かれて誤解されちゃうとか、アンジャッシュの「勘違いコント」みたいなシーンが面白い。すごく練られている。ロジャーの中に女の魂が入ってしまうシーンでも、何気に後ろのほうで大道芸人がパントマイムをやっていて、女に体を制御されてしまうロジャーの動きがそれに似てるとか、演出も細かいです。
ロジャーが浮気してると勘違いした恋人が、別れ際に「イッたフリしてただけよ」って捨てゼリフ吐いてその場でオーガズムの演技をしてみせるのは、おや、これは「恋人たちの予感」(1989)のパクリか?って思ったら、こっちの作品の方が早かった。本作の監督はカール・ライナーで、「恋人たち~」はその息子のロブ・ライナーが監督。父の作品からアイディアを拝借したのかしらん???
ともあれ。左半身で男性、右半身で女性を演じるというスティーブ・マーチンの超絶技巧の演技は必見です。