1.《ネタバレ》 アメリカでは一部の層にウケてヒットしたらしいですが、ジョナサン・カウエットというゲイの俳優さんが撮り貯めたビデオを編集したドキュメンタリーです。
まあ、非常に見づらいです。マトモに見るならもれなく眩暈や頭痛が付いてきます。
こういうカットバックというのかフラッシュバックというのか本当にやめてもらいたいなあ。人間の視覚能力なんて、そんなに進化しているわけがないんだからさあ。
内容が衝撃的だということでウケたようですね。幼いころからゲイを自覚していたとか、母の波乱万丈人生とかいうことで。
本人は、母が12歳だかで屋根から落ちて頭を打ったことが、息子である自分の不幸の根源であると思っていて、まずそのことをいうためにこの作品を作ったみたいです。題名もそんな意味なんでしょう。
非常に驚くのは、このヒトは、子供のころから撮り貯めた大量のビデオを、ちゃんと保管していたのだという事実です。当時はディスク化もできないから、保管に場所を取りますよね。しかも、住居も転々としたりしたわけです。…いったいどうやって保管していたのか。
さて、私はひととおり見てちょっとズルだなあと思わざるを得ませんでした。
母に関する事件や病歴は細かに説明しているのに、自分のことをあえて省いているところね。
ジョナサンの人生にとっての大事件が、意図的に省かれていますね。ジョナサンのゲイライフの白眉といえる初体験や、大人からの虐待の有無などが、全くありません。
なんだかこれでは「不幸はすべて母のせい。その母の不幸は屋根から落ちたせい。」ということだけを提示されて、それを吟味する要素を伏せられている気がしてくるのです。
母や祖父母にとって不名誉であったり到底世間に公表するべきでない事実を明らかにしているのに、自分のことは言わないのです。ローティーンのころドラッグやアルコールをやったという程度のことしか。
もしかするとこの時点のジョナサンは、己の受けた傷を公表するほどには回復していなかったのかもしれません。けれど、不特定多数の他人に映像を提供するなら、基本的に誠実でなければならないということを無視しています。そしてそれは自分で考えているよりも容易に他人に見破られてしまうのです。
もしも「ターネーション2」があって、そこでジョナサンが隠したいと思っている事実を明らかにするつもりだったなら話は少し違いますが。