2.《ネタバレ》 映画の始まりと終わりは、海辺でひじきを採取する山戸孝さんの姿である。
祝島のドキュメンタリーとしては同様のスタンスに立つ纐纈あや監督の『祝の島』もあるが、恒例のデモや伝統行事の神舞、上関町議会など
同じイベントを撮りつつもそれぞれアプローチの違いが垣間見れて興味深い。
鎌仲監督のほうは、撮影スタッフは三名。
ベテランらしく多彩なショットで『生物多様性のホットスポット』たる島の動植物の生態まで押さえつつエピソードを紡いでいる。
主に、島で一番の若手である山戸さん一家の暮らしぶりと抗議活動に密着しているのだが、
若い彼の理性的でしっかりした言動に感動する。
彼へのインタビューは、ひじきや野菜を取ったり、パソコンで産直販売の営業をしたりという活動の最中に撮られており、
その意志的な労働の姿と表情が、映画の中で語られる彼の言葉に説得力を持たせている。
犬や豚などとのふれあいの図に和まされ、沖合での中部電力との対立の図にいたたまれなくなる。