2.何よりもまず言いたいのは、「リヴ・タイラーがいい」ということ。彼女のファンならば、そりゃあ必ず観るべきだろうし、必ずしも彼女のファンでなくても気になる存在感を見せてくれるだろうし、三十代半ばにさしかかったこの女優の雰囲気に対して、思わず「エロい!」と言わずにはいられなくなることは間違いない。
はっきり言って、そういう要素だけでこの映画に“価値”はある。
そのリヴ・タイラー演じる人妻の滲み出る“エロさ”こそが、ある意味この映画の裏テーマでもあるのだ
決して完成度の高い映画ではないということは否めないが、どういうスタンスでこの映画を見始めるかによって、観賞後の満足度は大いに変動するだろうと思う。
不幸にも日本版のトレーラーやイントロダクションを鵜呑みにしてしまって、今風のソリッドシチュエーション的なサスペンスだと思っていると、大いに肩透かしを食うだろう。
僕は幸運にも観賞後にトレーラーを観たので良かったが、明らかに映画の内容を無視し、部分的には改ざんすら見られるトレーラーの内容は噴飯ものだった。
日本版のイントロダクションには、「この4人のうち死ぬのは1人」などと阿呆かと思わせるキャッチコピーを掲げたりしてしまっているが、そもそもこの映画はそういうタイプのものではない。
この映画がテーマとするものは個々人における「信条」との関係性であり、登場自分のそれぞれが「信じるもの」に対して、ある者は積極的に、ある者は強制的に対峙させられる様を描いた物語であると思う。
それを少々サスペンスじみたストーリー展開で彩っているに過ぎない。
登場人物たちが、それぞれ経てきた人生を礎にして、進むべき道を決断させられる様は興味深く、部分的には胸に迫るものもあった。
ただし、先述の通りだからと言ってこの映画の完成度が高いというわけではない。
最終的に振り返ってみれば、結局何だったんだという程度のお話で、設定や展開があまりに腑に落ちない部分も多い。
4人の主要人物が登場するが、それぞれが結構苦いトラウマを抱えているわりには、どうも人間が薄っぺらく見える。ドラマ性を深める要素は多分にあるのに、今ひとつ感情移入が伴わないのは勿体ない。
ともあれ、リヴ・タイラーの貞淑さの奥から徐々に滲み出てくる“淫靡さ”を受け、主人公たち同様に恋狂うことを楽しむべき映画だと思う。