1.密かに献身し慕っていた幼馴染みウィリアム(R・ハーロン)が他の女性との結婚を
決めてしまう。
溢れてくる涙を扇で隠しながら硬った笑顔を見せるスージー(リリアン・ギッシュ)
の仕草がいじらしい。
そんな彼女の純朴でせつない表情・身振りの釣瓶打ちだがそれがまるで媚にならない。
単なる可憐さだけでなく、品位そして愛すべき愚かさといったものまで
豊かに表現しているからだろう。
グリフィスが彼女にひたすらクロース・アップしたくなるのも無理はない。
ハーロンの後をついて小道を歩くリリアンが、右足をふっと真横に蹴るような
仕草をする。そのあまりにも何気ないささやかな動作ひとつで、架空のキャラクターに
一気に魅力的な生命を吹き込んでいる。
彼女の自伝によると、やはりこのシーンの演技などは批評家にも評価されたらしい。
二人が並んで村の小道を歩いていく。並木がやさしく揺れ、道端で子牛が一頭寛いでいる。
この詩情あふれる1ショットの美にも打たれる。