1.《ネタバレ》 『加藤泰、映画を語る』によると、当時は田宮二郎の吉良常の評判が悪かったらしいが、監督も誉めているように田宮二郎は大健闘だと思う。
時に愛嬌を、時に哀愁を、そして凄みを滲ませる芝居は絶品だろう。彼が病臥して以降のドラマが少し長く感じられるきらいもあるが、
シネスコ画面をフルに使った低位置カメラよって特権的なまでに長々と横臥する終盤の彼の芝居は独壇場である。
屋敷の縁側と、その遠景にミニチュアの機関車を走らせて見事な奥行きを表現したセット撮影の技。
随所に挟まれる特徴的な橋と水路、あるいは路地の情景の味わい。
その川縁を手を取り合い走って駆け落ちしてゆく賠償美津子と香山美子のショットが素晴らしい。