1.《ネタバレ》 第二次大戦初期の1939年11月~1940年3月に、フィンランド共和国とソビエト連邦が戦った「冬戦争」の映画である。この戦争は基本的にソビエト側からの侵略で始まったもので、これに小国フィンランドがほぼ独力で果敢に抵抗したことは当時から賞賛されていたらしい。
字幕によれば「第23歩兵連隊の軍事日誌と、同連隊で戦った兵士たちの記憶に基づいて作られた」映画とのことで、開戦前の動員のところから話が始まる。部隊はフィンランド南西部のカウハヴァの周辺住民で編成されたもののようで、みな近在の知り合いばかりのように見えたが年齢差もあり、1918年の内戦に参加した者や、1932年のマンツァラ蜂起で動員された経験のある者もいたらしい。銃は自宅に配備されていた(日頃の訓練などでも使っていた?)ものを持って行ったようである。
当初はまだ「戦略的な動員」であったために人々の本気度も半端のようだったが、認識票に関わる一連の発言などは、自分が死ぬかも知れないという覚悟を少しずつ固めていく過程のようにも思われた。配属先は当然ながら地続きの自国内で、到着後にいきなり現地女性と親密になろうとしてみたり(慰安所はない)、長目の休暇を取ったりして気が緩んできた矢先、突然戦端が開かれて慄然とすることになる。
その後は大勢がよくわからないまま眼前の敵との戦いを強いられていたが、最後はまた突然に講和条約が締結されて戦闘が終了し、その時点で生き残っていた者が結果的に助かった形になっていた。戦闘停止が知らされた後の両軍兵士の反応の差は、無理やり動員されて来て終われば帰るだけの連中と、戦いの意義はわかっているが犠牲が多すぎたと思う人物の対比を示していたようにも思われる。
この戦争の結果として、フィンランドはソビエト側の要求を容れる形で大面積かつ重要な領土の割譲を余儀なくされたわけだが、しかしここで断固として屈服しなかったことで「独立を守った」(字幕)というのがこの映画としての見解になっている。そのような認識は恐らく、劇中人物が言及していたバルト三国でも共有されているものと思われる。
ところでこれを普通にドラマとして見ると基本的には退屈であり、最後の最後だけわざとらしい演出で何とか形をつけようとしたかに見える。上映時間が当初は199分あったのをInternational Cutで125分に大幅短縮したとのことだが(DVDではなぜか122分)、いわば当時の再現映像のようなものであるから、個別エピソードを落とすことでいくらでも削減可能な性質のフィルムだったのかも知れない。それにしても登場人物の間でそれなりにできていたはずの人間関係が短縮のせいでよくわからなくなり、それでドラマ性に乏しく見えていたとも考えられる。
そういうこともあって、日本人では基本的にフィンランドの歴史、または軍事関係に関心のある人以外にはお勧めしない。軍事マニアなら199分版の方を見たくなるかも知れない。