1.《ネタバレ》 苦悩するロシア青年のかたわらに、ゴロリと転がる父親の死体。このゴロリと転がった死体が、いわばソビエト唯物主義の象徴。宗教性を排したソビエト社会の中で、「人間の死体の処理」という日常の出来事が、とことん唯物的な役所業務として、ほとんどドリフの葬式コントみたいなドタバタをともないながら展開されていきます。大きな棺桶を家から運び出すときに、あっちの壁にぶつかり、こっちの角にぶつかりするたびに、ソビエト特有の冷たくて寒々とした音が、乾いた反響を歪ませながら鳴り響いて、でもって、部屋の隅のほうでは、あくまでも「苦悩し続ける」ロシア青年。この対比が、ドラマの滑稽さをひたすら増長させていきます。絵と音の叙情性に相反するような、露骨なくらいの叙事性。映画の美しさとは無関係な、モチーフそのものの諧謔。この映画ではじめてソクーロフの凄さに圧倒された。暗いんだか、笑えるんだか、全然わかりません。(~~;