4.題材となっている実際の事件は、本多勝一のルポ「子供たちの復讐」に詳しく書かれています。著者が著者なもんで、本多勝一バイアスがかかっちゃってますけれど、一方、この映画。バイアスなんてもんじゃなく、かなり改変されています。
あくまで実際の事件をヒントにしただけ、ということなのかも知れないけれど、まだあまり年月が経っておらず限りなく現在進行形に近いこの悲劇を、こんな風に「人を傷つけかねない」形で映画化するなんて、あまりその是非については述べたくないとは言え、ホント、よくやるよなあ、と。
もしかして、新藤兼人は、怒ってたのか?
だとしても、ちと、アタマでっかちな作品、ではないかと思えて仕方が無い。
例によって性の問題を絡めて自分の路線に引き込んだり、父親の横暴を、近隣住人の無責任さを、進学校の非人間性を、極めて極めてステレオタイプに描いたり(ここまでくると硬直した偏見と言わざるを得ない)、という一方で実在の事件の顛末には一応、乗っかっておこうという点に、どうしても無理を感じてしまう。剥き出しとなった作為はコレ、貧弱さの表れ。
いや、西村晃、乙羽信子のお二人の体を張った演技が、その貧弱さを何とか覆い隠そうとしており、また実際、映画的な演出を欠くほどには無神経な作品でも無い訳ですが。
ただ、息子が家庭を破壊するシーンの迫力の無さ、特に、「撮影なのでホントには殴ってません」というのが信じられないくらいに丸見えになっちゃってる殴り合いシーンのヌルさ。何とかして欲しい。