4.父親を起こすエル・ファニングの愛らしさ。 ヘリコプターの爆音で伝わり切らない父親の謝罪。 痛いくらいに青く美しい空。 幸福な時間とそれに伴う虚無感。
想定外にストーリーに起伏がなく、映画スターだが自堕落な生活を送る父親と別れて暮らしている娘との束の間の時間の共有をただただ切り取っただけの映画だった。
両者の関係性に劇的なドラマがあるわけでもなければ、何が起こるわけでもなく映画は終わる。
絶対に退屈な映画であることは間違いないのに、それを忘れさせ、不思議な心地よさの中で愛おしい時間を見つめていた。
ソフィア・コッポラの真骨頂という触れ込みは間違っていない。
こういう何気ない描写を何気ないまま映し出し、そこに言葉にならない情感を生むことにこの女流監督は本当に長けている。
プロットとしては、同監督作の「ロスト・イン・トランスレーション」にとてもよく似ている。映画の美しさにおいては負けずとも劣らない独特の秀麗さを見せてくれている。
ただしかし、「ロスト・イン~」が“傑作”と疑わなかったのに対して、今作は絶対的な物足りなさは感じる。
それが主演俳優の差か、微妙なシナリオ構成の差か、はっきりとは分からないが、映画としての美しさは溢れているものの、“面白味”に欠けてしまっていることは間違いない。
それでも、冒頭に記したようなとても印象深いシーンが幾つかあるだけで、良い映画だとは思う。