121.満点を与えようか迷うほどの素晴らしい傑作。
81分間という短い時間ながらぎっしりと中身が濃い、充実した映画。
そして一瞬も気を許せない緊張感。
さらに満足すべきなのは、素晴らしいアイデアと脚本と演出だ。
特にラスト付近のスチュが洗いざらいぶちまける姿は見事だ。
スチュの人生はキーファーとの電話で明らかになっていくが、二人のやり取りを見ているだけでスチュの人生、性格、生き方も見えてくる。
都合良く話を作り上げたり、言い訳やごまかしを多用し、すぐに人のせいにする。
このやり取りを聞いているだけで、スチュの生き方が分かる仕掛けも見事としか言いようがない。
決して悪党とは言えない小悪党を次から次へと裸にする様は素晴らしい。
最初見たときこれがもっと大悪党だったら面白いかと思ったがそれは大間違いだった。
というのもスチュとは映画の特別な存在ではなく、いわば我々自身の姿とも言えるからだ。
衣装や上辺だけを装い、ウソで塗り固めた偽りの人生を生きているのは彼だけではない。
他人に対して傲慢にあたり、利用できる人間だけを利用しようとするのも彼だけではない。
その彼に罪を償わせ、許しを求めさせたのは何故か。それは我々も罪人だからなのかもしれない。
コリンファレルはかなり良い演技をしていたんだが、自分はこの役をトムクルーズにやらせてみたいと思った。
彼がどんな人生を告白するか考えただけで面白そうだ。
大抵の映画なら主人公や警察の機知で犯人役が捕まるというオチが相場なのだが、この映画では犯人がどんなオトコで、何の目的(ほとんど分かるけど)でこんなことをしたのか明らかになっていないが、その点も自分がこの映画が好きなところだ。
なんでもかんでも映画内で明かにするのではなく、少しは観客に想像を掻き立てる映画というのもアリだろう。