5.意味不明な邦題に騙されて、危うく名作を1本見逃すところでした。
障害者と健常者の友情とか、貧富の格差を超越した信頼関係とか、胡散臭いキーワードに偏見を持ってしまって、どうせお涙頂戴の感動物語なんでしょ?なんて思ってたけど、この作品にそんな偽善的な涙はありませんでした。
ユーモアと不謹慎の境界線みたいなものがあるとしたら、もう完全に超えてしまってると思えるくらい不謹慎だけど、何故か許せてしまう。
すべてはドリスの魅力の成せる業といったところでしょうか。
正直、冒頭のシーンではこのキャラにどう感情移入すればいいのかわからなかった。
街中を暴走して、警察には嘘を吐くし、ほぼ犯罪者ですからね。
でも、実はいい人なんて展開なのかと思ったら、話を遡ってみてもやっぱり犯罪者。
卵は盗むし、マリファナは吸うし、前科もある。
ここまで酷い設定だと、黒人に対して差別的過ぎると怒られそうではあるけど、それがどうした?って気にもしないような性格のドリスが魅力的過ぎてどんどん嵌っていく。
フィリップがドリスを雇った理由とか、ふたりの関係性に心から納得できました。
オペラのシーンくらいになってくると僕の常識も少し麻痺してきて、他のお客さんに迷惑掛けてマナー違反じゃないかと思いつつ、ドリスの言動に共感させられてしまうんです。
誕生日会でドリスが踊り出したときには思わず僕も踊り出しそうになりましたよ。
あと、絵を売り付けるシーンとかも最高ですね。
世の中のありとあらゆる偏見や価値観に対して、最高の皮肉で笑い飛ばしてしまう爽快さがありますね。