1.人生は一回きり。繰り返し起こるものではないのだから、理科の実験のように様々な仮説を立ててそのつど実験し、その中から正しい仮説を判断することはできない。ゆえに勝つ者が勝ち、負ける者が負ける。後者の描写はヴィスコンティの初期に見られる。後期は勝った者の負け(というか崩壊)だ。ヴィスコンティといえば滅びの美学の代名詞として有名だが、それもこの映画のように「滅び」そのものを鋭く見つめた過程があったからこそである。しかし、この映画が何を言いたいのか、私にはよくわからなかった。生きることの厳しさ?ん~。不条理な社会へのメッセージ?という冗談は置いておいて、例えば戦争という人間の心に深くて広い傷を作る現象を、ぞれが実際に戦争そのものとしてではなくても、戦後の社会に及ぼした影響という点で見ても、リアリズムというかたちで表現すれば同時に限界もあらわれるはずだろう。リアリズムがリアルであることに忠実である以上は。おとぎ話のような「ミツバチのささやき」が痛いほどにスペイン内戦の後遺症を表現できていることは紛れもない事実。とはいってもこの映画はやはりどう考えてもすごい。役者として漁村の人々をそのまま用いたらしいが、まさにパッション(イタリアだからパッシオーネ?)。わかりやすい金持ちと自由奔放な女と、あのイタリア語。ヴィスコンティはもっとイタリア人の映画を撮ればよかったのにと、たまに思う。