1.余韻を拒むようなサクサクしたテンポが心地よく刻まれるボギーの犯罪映画。雪に覆われたシェラの山々、出所したボギーが公園を歩く時の澄んだ空と風に揺れる木々のざわめきに彩られる画面は<フィルム・ノワール>に対し<フィルム・ブランカ>と呼びたくなるような白さを感じさせます。そして足の悪い少女、ボスの病死などを描きながら、男女関係、上下関係に全くべとつきを感じさせない乾いた人間関係の爽快感が全体を覆い、最も存在感を漂わせる犬・・・その犬にまつわるエピソードが序盤に語られることで、そのしぐさが愛くるしいほど相対的に「不吉」さがじゃれるように始終フィルムにまとわりつき、ラストでバスケットから左目だけをのぞかせるその犬のショット、牧歌的なこの弛緩したショットが不吉性の飽和状態を突き破り、必然なる結末を予感させる鮮やかさはお見事。これは“いぬのえいが”です。