4.政府や国家権力に対する不満や怒りを「暴動」という形で訴える。私たち日本人には真似できないことかもしれないが、それが国民性の違いといえる。
物語は、ボブ・マーリーの曲と共にそんな暴動シーンから始まり、人種・移民問題、貧富格差、犯罪や暴力などフランスが抱える社会問題を浮き彫りにしていく。とはいえ、力説しているわけでもなく、説教ぽさもなく、低所得者や移民が多く暮らす団地地区を舞台に、そこで育った幼馴染の若者たちの日常をドキュメンタリー風にさらりと映しながら、現代社会の歪みを淡々と描いている。
ヴィンツ、サイード、ユベールを中心に仲間内でじゃれ合ってるかと思うと、すぐ口論になったり、子供じみてるようで、投げやりな態度、でも何か生き方や自分を変えたいと体中にエネルギーを溜め込んでいて、些細なことですぐキレる。常に暴力や犯罪と隣り合わせの頽廃的、刹那的な若者たちの姿が実にリアル。「こんな生活から脱するんだ」という心の叫びが生々しく、「落下が問題ではない。着地が大切なんだ」というフレーズもテーマを明確に表しており、観ている側に痛いほど伝わってくる。若者たちの会話(フランス語が分かると)も面白く、モノクロの映像と音楽もカッコいいし観る側をずんと惹きつける。