2.見ている間じゅう、今オレはとてつもない「傑作」と出会っているんだ、という戦慄とも感動ともつかない“畏怖”の念を抱き続けていた…。そしてあの時の衝撃は、未だに心に残っている。…1人の少年が、1人の少女をナイフで殺してしまう。ただそれだけの「事件」を、台湾のある時代の《叙事詩》に仕立て上げたエドワード・ヤン監督。…言いたいことはいっぱいあるけどキリがない。ただもう、すべてに圧倒的な素晴らしさなんである。けれど、ひとつだけ言わせてもらうなら、最後に殺される少女の、決して特別可愛くも魅力もないのに、その暗い情念がいつしかいつしかひとりの「ファム・ファタル」として、映画(と、主人公の少年)に君臨していく。その一点だけにおいても、ただただ感嘆あるのみのぼくなのだった。