1.原作の短編小説「あなたの人生の物語」は、やや技巧的に過ぎる面がありながらも、それなりに尖っているし、狙いは明瞭で、無駄な描写はほとんどなく、個人的には、それほど大きな感動は得られなかったけれど、知的な刺激は得られた作品という印象でした。さて、本作は、ビジュアル化に際して、多くの原作改変がなされています。原作の改変自体を改悪と断じるつもりは毛頭なく、むしろ納得のいく素晴らしい改変を見たいがために、映像化作品を鑑賞するといっても過言ではないのですが、本作においては、本筋とあまり関係ない、表面的な見栄えの工夫に力点が置かれ、結果的に、既視感のある無難な驚きに溢れてしまい、尖った部分が埋没し、作品の狙い自体がよくわからなくなってしまったという印象です。最終的に原作にはまったくない、国同士のてんわやんわに発展するのですが、それがやりたいなら、原作関係なく、フォーカスをそこに絞って一から作ればいいのにと思ってしまいました。大人しく、原作のルッキンググラスを精密に再現して、異星人との交流をじっくりはっきり描いたほうが、よほど新規性が感じられるし、数倍面白かっただろうになと感じてしまうのですよね。