1.ベアトリスの豊満でのびやかな肢体に見惚れた「ベティ・ブルー」。アンヌ・パリローのシャープな演技に憧れた「ニキータ」。これらの二作品の後にこの作品を鑑賞すれば、フランス女優の底力を確認できると思う。ベアトリスのイヤラシイ口元は健在だし、精神の危うさを表現する顔力も見事。だが、特筆すべきは、アンヌだろう。この作品を撮った時のアンヌは、34歳前後と思われるのに、邪気の無い表情…ベアトリスの肉体が変化(改造?)していたため、時の流れを感じたのに、アンヌの表情やしぐさの数々が、私の体内時計を狂わせた。私は、ハリウッド映画に対して、「鑑賞後の感想なんて考えなくていいよ~」な、野放し的なものを感じているのだが、フランス映画は違う。自らが野放しにしてしまうと、その責任を課せられるような恐怖を覚えるのだ。それは、たぶん、登場人物に何かを選択させる場合、ハリウッドでは「俺(私)ってクールだろ~」なのだが、フランスの場合、その登場人物の、人間としての深淵を覗かせようとするからだと思う。この「彼女たちの関係」でも、アリスの選択は、かっこいいとか悪いとかのレベルで語られてはいないし、こちらとしては、理解しがたい選択だ。だが、アリスという人物が、何故それを選択したのかということを、考えないといけない気にさせられるのだ。だが、考えたところで、答えは出せない。なぜなら、アリスにしか分からないことを前提に描いているからだ。そういう底の見えない場所に観客を放り込もうとするのがフランス映画だと…勝手に思っている私である。…が、ラストが、いかん…何故いけないのか表現できないのが悔しい。