1.美術畑出身のリドリー・スコットは俳優以上に背景・セットを重視するあまり、
『ブレードランナー』を主演のハリソン・フォードが嫌っているというのは有名な話。
この作品もまた、主演俳優はひたすら無様に走り廻り、活躍らしい活躍もなく、
極めて魅力が薄い。
「デザインも映画の脚本」の弁のとおり、、
監督にとって主役は異世界のランドスケープと云っても良さそうだ。
従来からスコットは濃いバックライトとインセンス・スモークの活用、
そして奥行きのある構図取りによって三次元的な効果を創り出してきた。
ここで主にそれを担うのは山間の雲であり、巨大な砂嵐であり、
宇宙船の上昇と落下に伴う砂塵である。
ただ既出のデザインも多い上、3Dによる3Dホログラム映像といった趣向など、
そのままデジタル加工に拠っている部分もあり、
光と霧と建築物そのものを駆使して演出した『エイリアン』や
『ブレードランナー』の立体感の味わいにはどうしても欠ける。
即物的な迫力だけを狙った立体感ではつまらない。