1.“全編車載カメラ”なんていう売り言葉、すでにイヤな予感がしてしまう。多分、低予算を逆手にとり、いわば製作上の制約を別の制約で中和しようというやり方なんでしょう。イヤな予感してるんなら観るなよ、と言われそうですが、スミマセン、最近ちょっと疲れ気味なもんで、とりあえずこういう、中身無さそうでも小粒で活きの良さそうな作品に流される、自分の弱さ。さて実際、1台のクルマを中心に描くというこの構成が制約となり、という以前に、そもそも、この構成を深掘りするだけの脚本上のアイデアが伴わず、企画倒れの印象は否めません。主人公が逢いに来たという妻との関係もまともに描かれなければ、車の同乗者との関係もコレといって描かれることなく、同乗者は退場してしまう。スピード感どころか映画はしばしば停滞し、一本調子。これについては、映画前半と後半で主人公を色分けするような事もしていないポール・ウォーカーにも、責任があると思うのですが。まあしかし、文句言うのもこのくらいにして、いいじゃないですか、たまにはこんな映画も。それにこの作品、ヨハネスブルグを舞台にした、というだけでも、しっかりと独特の味付けになっているんじゃないでしょうか。街の落書きやスラムの荒れ果てた感じ、異邦人である主人公や我々の目には、一見すると不気味に映り、よそよそしい黒人たちにも非常に距離感を感じるのだけど、この辺りの描写が伏線となっており、主人公が車の塗装を依頼するシーンで活きてきて緊張とユーモアをもたらす。別に脚本がノーアイデアという事は無くて、上手いところは上手いのです。