3.母娘にちょっかいかける寅さん、「親子ドンブリの巻」ってか。まず前半、とにかく寅さんのデタラメぶり。満男の代理美人教師(美人教師って言っても所詮、壇ふみだけど)の家庭訪問をブチ壊しにし、これには博も大激怒。とらやを飛び出し、旅先で今度は事もあろうに無銭飲食という卑劣極まる犯罪に手を染める。連絡を受けたさくらが駆けつけると、何と現地の警官達まで寅さんに懐柔され、店屋物を頼んだり温泉に行ったりと、好き勝手の毎日。大体、無銭飲食をやらかした寅さんに対し、これをたしなめるどころか、カネも持ってないのにさらに出前を頼みまくる、なんて行為を警察が認めるか? もうメチャメチャの展開・・・だが、これには一応、映画の展開の上での必然性がある。後半、例の美人(?)教師の母親に夢中になる寅さん、しかし、その母親は余命幾ばくもない、という重いテーマが展開される。前半の寅さん(及びそれを取り巻く状況)のケーハクさは、後半のテーマの深刻さ・寅さんの真摯さとの対比になってるワケですな。しかーし。これって寅さん映画に向いたテーマだろうか?キャラの出来上がった「寅さん」で描くには不適切ではないの?いやむしろ「適切すぎて」「“そのまんま”過ぎて」「意外性がなくて」手抜きっぽく感じる。シリーズ18作にもなって今更、ここまでの単純化・図式化は、許されないのではないか・・・。それに、肝心の映画後半だって、充分ヘンテコ。年上でしかも言動がチョットおかしいオバチャンマドンナに惹かれる今回の設定には違和感バリバリ(このマドンナ、とらやに突然たずねて来て一人合点で喋りまくり。「目の小さい面白い顔の坊ちゃんはどこ?」って、アンタのすぐ隣に立ってるっての。異常なまでの浮世離れぶり)。娘も変で、先生が特定の生徒の父兄の家に入り浸って食事とかしてていいのか? というわけで、もうちょっと脚本&設定に神経を使ってくれなくちゃ、観てて困っちゃうのよね~という映画でした。ラスト、柴又駅ホームのシーン、最初は寅さんとさくらが離れて立っているが、マドンナの話題をキッカケに二人の距離が縮まる。前半の、全く会話が成立せずさくらが溜息をつく別所温泉の場面と対を成す、印象的なシーンであります。が、その直後、寅さんが乗った電車が発車するシーンでは、電車の窓にスタッフ(監督も?)と思しき姿がしっかり映りこんでて、またまたガックリきてしまったのでした。