1.1950年代のグンナール・フィッシェルと組んでいた頃のイングマール・ベルイマン監督の作品は画が保守的でつまらないと思ってるのですが、スヴェン・ニクヴィストと初めて組んだこの作品は冒頭からバッチリですね。なぜ処女の泉まで再度組むことがなかったのか不思議なぐらいですが、この作品は興行的に大赤字だったみたいなので映像が斬新すぎたと判断されたのでしょうか(笑)。道化師が主人公のためどうしてもフェデリコ・フェリーニ監督の道と印象が被るのですが、あちらと異なり女性が決して男の犠牲になろうとしない辺りが作家性の違いですね。演劇の監督に侮辱される場面は映画監督という当時は賤業に近いものに携わっていたという監督の自虐でしょうか。雨の表現やクライマックスが男同士の決闘である点は黒澤明監督の羅生門からの影響が伺えます。冒頭の回想シーンでの大砲のカットバックは男根の暗喩という演出であることがあからさますぎてあまり好きではないですね。話は重苦しい割に後の作品ほど深いテーマはなく通俗的なメロドラマに近づいてしまっているとも感じます。