5.ヤボは勝つという話。日本の洒落本の世界でも、最初は通人がヤボを馬鹿にするものだったのが、時代が下るとまじめなヤボのほうがモテるという逆転が起こる。ここでも、中小企業の社長と芸術家集団とで、ヤボな前者が輝やき、後者の俗物ぶりが浮き彫りにされる。この話全体が実にイキである。たぶんフランスでは英会話学校に通うなんてのはヤボの骨頂なのだろうな。でもその言葉を限られた状況が、ウブな恋をする中年男の状況とうまく重なっている。フルートの実につまらないメロディのパートも、ラストでアンサンブルになると、それはそれで楽しい。人生ってこれだなあと思う。