1.ペドロ・コスタ初体験。のせいもあるかもしれないけど、こんな映画観たことない。根底の部分において今まで観た映画とは別次元にある。作品の舞台となるスラム街が何故取り壊されるのかはどうでもいいとして(開発の過程で壊されてるんだろうけど)、ギリギリまで立ち退かず、また立ち退いても行く当てのない人たちの日常を切り取っている作品の中で、「何を言いたい」ではなく、ただひたすら切り取ったものを見せているという感じ。こんなにも何も語らないドキュメンタリーを観たことがない。多くは家々が壊される映像と音、ヴァンダという名の女性をメインにとらえた会話、そしてヴァンダも含めた住民のドラッグまみれの日常の描写が占める。朝、昼、晩と順繰りに映される日常に家々が徐々に壊されるという変化以外何も起こらない。たしかに美しい画が時折飛び込んでくる。部屋の光の当たらない片隅は「影」というより「闇」と言ったほうが正しく、そのうち全てのものを被ってしまうのではないかと錯覚するくらいに「闇」自身が自己主張しているかのようだ。その恐るべき「闇」があるから明るい場所がなんとも言えない美しさを勝ち得ている。でも、観ているうちに不安になる。この映画、いつ終わるの?と。なぜならいっこうに終わる気配が無いから。結局のところ、唐突に(映画の)終わりは来て安堵したのだが、いったいなんだったんだろう、、、と。何かを「観た」という手応えだけがあって、何を見たのかさっぱり解からない。私はいったい何を観て、何故手応えを感じたのか、、それを理解するにはもっと映画を観なければならないのだろう。