3.津軽の風の音、景色から伝わってくる北国の匂い、そこには常に厳しい生活というものを覚えずにはいられなくなるほどこの映画の雰囲気もどこか厳しさというものを感じさせる。斎藤耕一監督作品には常に冬の香りを感じる。何かに対して怯えるような少女がここでもまた登場するように少女の眼から見た大人社会に対する眼差しの向こうに別の世界があるように、この映画の中で語られる少ない台詞、無駄な台詞をなるべく使わずに映像だけで語るということに関してこの監督のセンスには毎度ながら感心させられる。一方で今作に関しては物語としての面白さがあまりないのが難点である。そういう意味で同じような雰囲気を感じさせる映像の「約束」や「旅の重さ」に比べると低い点数を付けなくてはならないが、日本の景色、美しい音と匂いを映画で感じてみたいと思う人は一度は見て損のない映画でもある。但し、大作志向の方にはお薦めできない映画ですので、そういう方は見ない方が良いかもしれません。