3.映画で触れてるわけではないけど、見ながら「あちらアメリカ」と「こちら日本」の体質の違いにしばしば思いが行った。あちらの合理主義、データを集めて、効率を最大限に高める軍事姿勢。別にルメイが立派だったと思うつもりはさらさらないが、当時の日本の精神主義で凝り固まった軍人と実に対照的。映画ではその効率主義の非人間性に批判的な視線を向けていたが(焼夷弾投下の映像にデータの数字が重ねられる)、精神主義の非人間性も苛烈だったことを我々の歴史はよく知っているし、「戦争で勝つ」というゲームの中では、効率主義のほうが精神主義よりは優れていたわけだ。そういう経験を経たマクナマラが、教訓として「理性は頼りにならない」という条項を挙げているところに、「戦争の霧」の一筋縄ではいかない深さを感じる。それともう一つ「決して、とは決して言うな」。日本の政治家はすぐに「不退転の決意」とか大げさな言葉を乱発し、それを「まさに」とか「しっかり」といった常套副詞で飾り立てる。そして一般社会ではとうていトップには置けないような頭も言葉も軽い人物が、政治家一族で金持ちというだけで総理大臣になれるシステムがある(AとかHとか)。私はアメリカ崇拝者ではないし、このマクナマラの「教え諭す」ような態度は心地よくなかったけど、政治風土の落差は感じざるを得なかった。好き嫌いは別にして何事かをやり遂げた男の顔の厚みはあり、日本の政治家の顔はこれだけの時間のアップに耐えられないだろう。ドキュメンタリーとしては、映像的にはあんまり面白くなく、先に挙げた数字の焼夷弾とか、ドミノ倒し理論のところで実際に地図の上でドミノ倒しをやったり、つまんないことしてる。