1.何もかもを失いかけている二人の男が、それぞれの人生を背負いながらリングに立つ。お互いの事など何も知らないまま、ただ相手に勝つ事だけに賭けて。男臭い映画です。カッコ悪い生き方をしている二人が、一切カッコ付けずに、でもカッコいいクライマックスを迎えます。一切の虚飾を廃したラストの試合シーンは見事。歓声もセコンドの声もテレビの解説者の声も一切なく、ただ殴りあう音、息遣いだけが聴こえる表現は、あくまで二人のボクシングの動きだけで見せるという、役者が本気でないとなかなか出来ない世界。ただ、その試合に至るまでには少々ひっかかる部分が無きにしも非ずでした。まず、絶えず動き続けるカメラがちょっと不快。「プライベート・ライアン」以降お馴染みの、あのパラパラ映像(高速度で撮影しておいて、中を抜いて正常速度にするアレ)がたっぷり使われていて、でも効果としてこの映画に相応しいのかなぁ?と。目が疲れるばかりです。それから、登場人物が沢山いるんですが、どういう関係、どういう位置の人なのか不明なまま、って人物が何人もいて、思わせぶりで終わってしまっていたり。そういう枝葉がちょっとざわついていたので、試合に向かって高められてゆく感じが薄らいでしまっているのが残念です。でも、チェ・ミンシクって役者さんのプロ根性を実感するだけでも一見の価値あり。本当にこの人は多彩と言うか、引き出しの数がもの凄く多い役者さんですね。