1.〝笑う〟というのはとても大切なことだと思うが、人を笑わせるというのは泣かせるよりも難しい。まして道化を演じる者はプライドもかなぐり捨ててある種のバカにならなければならないし、それでいてユーモアというようなある種の知性がないと観客を魅了することはできない。つまりピエロになるということは相当な勇気がいることである。本作は戦時下、しかも処刑待ちという絶望的な状況で対照的なそのピエロの必要性を明確に説いている。悲劇を喜劇に変えてしまう素敵なドイツ兵の登場にどうしたって拍手を送りたい気分になる展開は見事であり、寓話チックな珠玉の心温まる物語は素晴らしい。・・・しかし、もう完全に個人的な問題なのだが私はピエロを面白いとは思えない。だからゾゾがいくら頑張ってくれても笑えなかったのだ。つまるところ何が言いたいのかというとピエロに笑う人々が嘘臭く見えてしまうことにより作品との間に壁ができてしまったのがマイナス点である。何しろこれから処刑されるってのに神経のピリピリをピエロで抑えられるかって思うし、平穏な時は平穏な時で大の大人たちがピエロだけであんなに笑えるかって思ってしまう。もちろん当時のフランスでピエロがどれだけ笑いをとれたか知らないので、現代日本人でピエロに笑みがこぼれない者の感想ですけど。