2.はい、やっと観ることができました、この作品。
ロメロと言えばゾンビ映画、のイメージですが、この作品はまだキャリア初期の頃、『ナイト・オブ~』の数年後。
『ナイト・オブ~』ではゾンビ対人間、という対立関係・断絶関係に、明確な境界が引かれていて、しかにそこに、人間がゾンビ化したり、人間対人間の断絶が描かれて、境界が揺らぐ。
それが、作品を追うごとに次第に、境界自体が曖昧になっていった感があります。
で、この作品。ゾンビ映画ではないけれど、ネタ的にはかなり近いものがあって、細菌に感染した人々が凶暴化、いわばゾンビ化する、という趣向。防護服を着た兵士、なんてのは、感染者と非感染者の境界をイヤでも感じさせるけれど、一方、あくまで描かれているのは細菌感染なので、当然、感染者と非感染者の境界は揺らぐし、そもそも感染しているのかいないのかも時には区別がつかなかったりする。それどころか、一連のゾンビ映画よりもずっと、両者の関係が相対化されていて、かなり醒めた視線で事件の経緯を描いています。だもんで、特定の人物に肩入れして描かれることもなく、そこが本作の愛想の無いところ。しかしユニークなところ。実験的、と言ってもよいかも。
こうやって見ると、もしかすると、ロメロが本当に描きたかったのは本作のような世界観だったけど、残酷趣味を含めたエンタメ性の確保、という観点ではゾンビ映画しかなかった、ってなことなのかも。