1.温暖化で草地が減ったせいもあるんだろうけど、それよりも時代の変化、遊牧だけで暮らしていけなくなった現代の遊牧民の家族。近くをトラックが頻繁に走るほど、都市化も進んできている。アメリカ映画のカウボーイものと似ている。あれも遊牧が農業に追われていくことの挽歌みたいなものだった。定住するものが流浪するものを駆逐する。その自分たちを追い立てるトラックにヨーグルトを売って、かろうじて生計を立てていく。追い立てるトラックは赤く、追い立てられる遊牧民を象徴するのは白い馬に白いヨーグルト。この白を守ろうとして、夫はドン・キホーテを思わせる活躍をするのだけど、ついにドン・キホーテのような衣装に包まれて敗北する。話の枠はけっこう大味な配置(ディスコとの対比とか)、しかし一つ一つの画面にそれを越えて訴える力があった。馬のいるカットすべてに、それだけでもう遊牧生活への思いが、流浪への憧れが詰まっていた。追い立てる赤に、中国共産党を見るのは考え過ぎだろうな。