5.日本ではラグビーW杯以来、「笑わない男」ってのが流行って(?)ましたが、こちらは、笑わない女。
ソ連ジョーク満載で、共産主義をからかったネタが次々に出てきますが(駅に迎えに行くシーンで、ソ連の役人かと思ったらナチス党員だった、というのは、今にして思うと、ちょっと毒が効き過ぎなくらいの鋭いネタですが)、筋金入りの共産主義者と思われた無表情のニノチカが、つい笑ってしまうくだりで物語は大きく転調します。このシーンも、「いくらレオンがジョークを言っても笑わなかった彼女が、レオンの失敗を見て笑う」という展開になっていて、やはり物語の転機としてはアクシデントほど効果的なものは無い訳で。
だもんで彼女の「笑い」は映画の中でなかなか印象深い事件となっているのですが、正直、タイミングとしては少し早すぎですかね? もうちょっと険悪な雰囲気で粘ってくれてもよかったかも知れず、二人がネンゴロになってからがちょっと長いような気もいたします。
基本的に共産主義をからかって、ソ連人が自由社会の楽しさにかまけていく姿、しかしそれこそが人間らしい姿、を描いているようにも思える反面、レオンと使用人との関係などには彼の「いい加減さ」も容赦なく描かれていて。
冒頭から映画にコミカルな味付けをしている3人組が、ラストでは共産主義と自由主義をうまくブレンドしてみせて、気の利いたオチを提供しています。