3.現代では科学vs宗教、哲学vs宗教は別問題として扱われるが、昔は哲学者≒科学者だったということがわかっていないと少々混乱するかもしれない。その他、宗教と政治、主人と奴隷、師弟関係、男女関係、親子関係等々が複雑に絡み合った重厚とは言えないまでもそれなりに見応えのある作品になっている。「宗教は信じるもの(真理は啓示されるもの)、哲学は疑うもの(真理は探究するもの)」という違いが明確に描かれる中、越えられない身分制度という不遇を宗教が救ってくれるというのもまた事実。他方、昨今では政治と宗教はあまり問題にはならなくなったが、原発やコロナ等々政治と科学が問題になっている。とはいっても、現代では資本主義という宗教が蔓延しているわけで、という意味では政治と宗教の問題は引き続き大きなテーマになっているとも言えるのかもしれない。そういったロゴス的なテーマとは別に、師弟関係、男女関係、親子関係といったエロス的なテーマもあるわけで、人生はその相反するテーマのバランスをどうとるのかが問題となってくる。本作ではそういった両者のある種の矛盾が悲劇的に描かれており、現代人にも訴えかけてくるものがある。