2.かなり満足できたサスペンス映画でした。魔法のアイテムを手に入れて浮かれていたら後で大変なことになったというのび太チックな物語なのですが、本作の監督と脚本家は基本設定がとにかく雑であることをきちんと認識していたようで (財界の大物が欲しがるアイテムをなぜ街のチンピラが持っている?そして、なぜそれを主人公に飲ませた?etc…)、設定を深掘りせず主人公のサバイバルに物語の焦点を絞っています。この戦略が吉と出ていて、90分の勢いあるサスペンス映画としては年に数本出会えるかどうかというレベルの面白さとなっています。特殊な設定のおかげで先読みの難しい物語に仕上がっているのですが、同時にこの設定のアラを観客に見透かされる前にさっさと話を終わらせているのです(これ以上設定をいじくっていれば、映画は空中分解していたことでしょう)。観終わった後から振り返れば、主人公が執筆した小説、今カノと元カノ、主人公の殺人容疑等、投げっぱなしのネタがいくつも見つかるのですが、スピーディな語り口のおかげで観ている間は特に気になりません。ブラッドリー・クーパーの飄々とした個性も設定のアラを隠すことに貢献しており、これは映画化の勝利だと思います。