3.数年前に原作者の小菅さんの話を聞いたことがあるのですが、これは実話である原作をできるだけ忠実に再現することに力が注がれています。
ごく普通の主婦がアルツハイマー型痴呆の義母を家庭で介護するというのは想像以上に大変なことです。話を聞いたときには彼女の忍耐強さと人柄にほとほと感服しました。
この状態での介護は実の親でも我慢できるかと思うほどです。
最初は義母に振り回され家族まで巻き込んでの修羅場から家族の協力、ヘルパーさんなどの社会的援助を得、地域の人の理解を求めて、、と結果的に理想的な介護モデルが示されています。
小菅さんは自身の体験をもとに講演をしたり痴呆老人を抱える人たちへの相談にも応じていますが、本作は同様の老人問題を抱える人たちへはいろいろ参考になることと思います。
政子さんが痴呆になってから描き始めた絵が素晴らしいのは地元では新聞にも載った有名な話です。見せて頂いた絵から想像するに、作中で使われた絵は彼女の描いたものだと思われます。「大切な人」という絵は原田さんをモデルに描いたものでしょう。原作に忠実にと地域で協力した豊明、あるいは犬山などロケはそれぞれの地元で行われています。一部ドキュメンタリーのように素人さんと共演した原田さんたちはさぞ大変だったことだろうと思います。
こうした裏事情を知っているのでなかなか客観的な評価は難しいのですが、前半がやや説明不足気味というか物足りなさを感じるものの、後半巴さんが義母と心を通わせていく過程の描き方や、家族みんなで南部の梅を見に行くラストシーンは感動的でした。
出演者は皆さん好演でしたが、特にちょっと登場しただけの加藤登紀子さんがとても自然にやってたのが印象的でした。