1.列島を圧巻する”韓流ブーム”にあやかり「泣ける純愛映画」として宣伝されているが、これは『猟奇的な彼女』と同じく監督の妄想・願望をチョン・ジヒョンという世界一スタイリッシュな女優を使って具現化した映画である。「泣ける」後半部分は単なるおまけに過ぎない。クァク・ジェヨンという男を自分はそれほど知らないが、この男は間違いなく生粋のマゾヒストだ。
突然現れた女性警官と手錠で繋がれ、気がついたら恋人同士になっている。青臭い中学生の、恥ずかしくなるような妄想である。単純に監督は美人でカッコいい女性警官に逮捕されたかったのだろう。激しく啖呵を切られ、睨まれ、手を縛られ、振り回されたかったのだろう。だから梯子のように踏みつけられることも快感で仕方が無いに違いない。
その証拠に彼女の凶暴性が薄れる後半部分はひどくつまらない。感動的なシーンを描いて観客を泣かせにかかった途端に映画の魅力は激減する。やはり監督自身のマゾヒスティックな願望を描いているから、映画に躍動感が加わるのだ。
さらに言えば凶暴なチョン・ジヒョンに魅力を感じる男も全員マゾだ。『猟奇的な彼女』に10点つけてる男はみんなそうだ。間違いない。自分には分かる。なぜか? それは自分もその中の一人だからである。
よって唐突すぎて付いていけなくなるストーリーも、常に何かが流れている音楽も、犯罪発生率が高すぎる韓国も、いらないよ!って思っちゃう最後のオチも、それらは全くと言っていいほど問題ではないのだ。”猟奇的なチョン・ジヒョン”を2年ぶりにスクリーンで観られて、”チョン・ジヒョンに殴られてみたいなぁ”とM心をくすぐられただけで、期待していただけの満足を得る事が出来たわけである。女優の魅力が全ての映画。 蛇足:もう一本作るなら女医役がいい。