1.島津保次郎監督第1回トーキー作品ということで、「トーキー上陸第一歩」ともいえるこの作品、初代水谷八重子の若き日の芝居を見ることができること、フォン・スタンバーグの「紐育の波止場」の翻案であること、などとも相成り、興味深く見させていただきました。まずは音ですが、汽笛、鉄道音、口笛、ピアノ音、工事音、酒場のダンスシーンでのレコード、乱闘シーンでの窓ガラスやビール瓶の割れる音、などなど楽しそうに取り入れております。終始和服の水谷さんとエキゾチックな雰囲気のある岡譲二さんとのコントラストは、磁石のSとNのようでいてなかなか楽しいです。二人ともかなり舞台調のオーバーアクトな台詞回しをするのが、2年後の「隣りの八重ちゃん」で日常的台詞回しの小市民映画を完成させる島津さんを思うと、これまたなかなか楽しいです。カメラ音の防止にボックスの中に入っていたため撮影中の火災により焼け死にそうになったという水谷至宏さんのエピソードもあるそうで、日本映画トーキー黎明期の労苦が忍ばれます。島津さんのサイレント作品も是非見てみたいですね~。