17.キューブリックの前作『非情の罠』と似たテイストの作品だが、それを上回る出来の本作。
85分というたださえ短めな上映時間なのに、更にそれを短く感じさせるスリリングな展開。
序盤こそゆっくりと始まるものの、数分後にはすっかり劇中の世界に力強く吸引されてしまった。
心地よく引っ張られた85分。
濃密というより、スピード感あふれる作品であった。
印象的なシーンを一つ挙げると、仲間の一人である太ったおじさんが、酒場で暴れるシーン。
わざとらしく上着が破れ、上半身がはだける演出はご愛嬌。
その後の展開には、目をスクリーンに釘付けにされた。
『非情の罠』での“マネキン倉庫格闘シーン”もかなり迫力だったが、この太ったおじさんが暴れるシーンは、その迫力を更に上回っていた。
重みのある体をうまく活かし、止めに入る警官達を次々に跳ね除けていく痛快なアクション。
決して格好のいいアクションシーンではなかったが、体格をうまく活かした躍動感溢れる格闘シーンに、他にはないリアリティを感じた。
ラストシーンも、思わず唸りたくなる様な巧い終り方。
鞄が落ちるシーンは少し強引さを感じたが、作品の締め方としては完璧であろう。
観ているこっちも、「あ~~~~あぁ・・・・」と茫然自失し、感情移入できる素晴らしいエンディングであった。