2.メインキャストの背後に印象的に配置された長崎の坂道。
その坂道を、夏服の女学生たちが、ベビーカーを押す主婦が、
下校途中の小学生たちが行き来している。そうした俳優の街への溶け込み方がいい。
そのベビーカーの親子はラストの坂道での交流に重なり、
女学生はコーラスの生徒たちのイメージと重なる。
空を舞う鳶や、水平線を見る背中や、バックミラーとの切り返しといった
類似・相似ショットのさりげない反復。
登場人物たちの対話における同一フレーズ・仕草の反復・変奏。
それらの繰り返しが、個々のシーンや端役まで含めたキャラクターのイメージを
より印象深いものにしていく。
黄色いランタン祭りの中を彷徨う赤木春恵と、花街を彷徨う原田貴和子の重なり合い。
現在と過去、幾度も登場した個々の写真のイメージがクライマックスで
鮮やかに集約する。