2.あのー。すごく言いにくいんですけど、これ大統領選じゃありませんよね。誰が言い始めたんだか知りませんけど、わたしもどこかで大統領選の話だと書かれているのを見てうっかりこの時期に手に取ったんですけど^^; 内容的にはいかにもアメリカン・ニューシネマという感じでこの時代のこの手の映画が好きな人には最後まで納得の出来栄えだと思います。系列としては『ネットワーク』とか『カンバセーション ・・・盗聴・・・』あたりに似たテンションだと思いますが、選挙戦という明確な一本柱を背負っていますのでニューシネマ独特の淡々とした運びが苦手な方でも比較的受け入れやすいストーリーなのではないでしょうか。ロバート・レッドフォードが正統派の美男子でありながら個性を重視したこの時代のアメリカ映画で一時代を画したことの理由には適切な役選びと、単なる二枚目に期待される以上の演技力があったと思います。この作品でもただのド素人であった彼が選挙戦を戦い続ける中である種のトランス状態に入り込み、圧倒的な高揚感の中で自分自身にすら手の届かない存在になって行ってしまう様子を表情ひとつで演じ切ってしまった。この力量は評価されて然るべきだと思います。それにしてもわたしより少し上の世代の人がブラピを見ては口を揃えて「レッドフォードにそっくり」と言う理由がこの作品を観て初めて理解できました。若い頃のレッドフォード作品は一通り観て来たつもりですが、この作品の彼が一番よく似てますね。いろいろな意味でレッドフォード無しには成立し得ない作品ですが、こういうのが一つの流行りであったとはいえ今なお残り続けているだけの価値は充分にある作品だと思います。こちらを先に観ていたら『ボブ・ロバーツ』をあれほど面白いとは思わなかったかも知れません。